ディルの栽培方法は? 栽培のポイント・水耕栽培などご紹介

ディルは、地中海から西アジアの広い範囲に分布する一年草の1種です。フレンチレストランなどに行くと、よく白身魚と一緒に添えられています。昔から、香辛料・ハーブとして使われてきたため、現在でもさまざまな料理に使用されているのです。種子・花も活用できる使い勝手のよいハーブとなります。そんなディルを育てる場合、どのような方法があるのでしょうか。ここでは、ディルの特徴から栽培のポイント、今注目されている水耕栽培の方法について説明します。

  1. ディルの基礎知識
  2. ディルの栽培について
  3. ディルの水耕栽培について
  4. ディルの栽培に関してよくある質問

この記事を読むことで、ディルの栽培方法や水耕栽培のポイントが分かります。気になっている方はぜひチェックしてください。

1.ディルの基礎知識

まずは、ディルを上手に育てるために必要な基礎知識を身につけましょう。ここでは、特徴・主な用途・魅力・活用法などについて説明します。

1-1.どんな植物か

セリ科の一年草となるディルは、ヨーロッパ~アジアが原産地です。どんな特徴があり、どのような使い道があるのでしょうか。

1-1-1.特徴

ディルの歴史は古く、約5,000年前の古代エジプト時代から治療薬として使われていたといわれています。古代ギリシャ・ローマ時代では、貴重なハーブとして薬用・調味料・芳香剤などに使われていました。中世では、悪魔を追い払う魔除(まよ)けのハーブとして大活躍した植物です。
そんなディルは、香りが特徴といえます。茎(くき)と葉はさわやかな香り、種子は刺激的な辛味、花は甘い風味が特徴です。

1-1-2.主な用途

ディルは、食用ハーブの中でも最も用途が幅広い種類です。葉・つぼみは魚・肉・卵・野菜料理などほとんどの料理に合わせることができます。特に、「魚のハーブ」と呼ばれているほど魚料理と相性抜群です。若葉は、クリームチーズ・ドレッシング・バターなどに混ぜて使うことができます。
また、鎮静作用・リラックス効果もあり、乾燥させた葉を枕に入れると安眠が得られるといわれているのです。
ほかにも、種子から抽出した精油成分のカルボン・リモネンは、古くから薬として使われ、芳香剤・胃腸に入ったガスを排出する駆風薬(くふうやく)として使うことができます。

1-2.魅力について

たくさんの魅力があるディルの人気の理由・香り・活用法を詳しくチェックしていきましょう。

1-2-1.人気の理由

先述したように、ディルの魅力はさまざまな使い方ができる点です。主に、料理用として使うことが多いですが、黄色い花を咲かせるのも魅力の1つでしょう。ディルは夏になると、小さパラソル型の黄色い花が群生(ぐんせい)します。観賞用のハーブとしても十分に楽しめる種類です。
また、初心者でも簡単に育てることができます。育て方が難しいわけではありませんので、気軽に育てることができるでしょう。今、話題の水耕栽培でも育てることができます。

1-2-2.香りについて

香りを強烈に放つのが、ディルの特徴でもあります。ハーブの中でもすがすがしい香りをしていますが、食べてみると甘味があるのです。この独特な香りが、心を落ち着かせる効果があります。ハーブなので、料理に加えると風味を引き立たせてくれるでしょう。

1-2-3.活用法・レシピについて

簡単な活用法は、葉・開花前のつぼみを肉・魚・卵料理・スープ・ポテトサラダなどに付け加えることです。加えるだけで、葉とつぼみの緑色が映え、香りを引き立たせてくれます。種子・花はピクルス・ビネガー・オイルに漬けこむとよいでしょう。また、気持ちを落ち着かせたい・リラックスしたいときはハーブティーがおすすめです。以下に、ハーブティーの入れ方をピックアップしてみました。

  1. 摘んだ葉を包丁で細かく刻む
  2. 小さじ1杯程度のハーブに対し、カップ1杯の熱湯をそそぐ
  3. そのままフタをして10分程度放置する
  4. 最後に、こしてから飲む

ほかにも、さまざまなレシピがあるので「ディル レシピ」とインターネットで検索してみてください。いろいろな使い方を試してみるのもディルの魅力です。

2.ディルの栽培について

では、どうすればディルを育てることができるのでしょうか。いろいろな育て方やポイントについて説明します。

2-1.好む温度・好適環境・時期について

ディルは、日当たり・風通し・水はけのよい場所を好む傾向があります。暑さに弱い特徴があるため、約18~25℃が適温です。暑すぎず寒すぎない4~6月、または9~10月ごろの種まき・苗植えがよいでしょう。室内で育てることもできますが、日当たりと風通しのよい場所に置いてください。

2-2.育て方いろいろ

ディルの育て方は、土を使用するプランター栽培と水を使用する水耕栽培の2つがあります。それぞれの方法をチェックしておきましょう。

2-2-1.鉢植え・プランター

鉢植え・プランターを使って育てる場合は、土を使用します。種まきの場合は、容器に入れた土に1cmほどの穴をあけ4~5粒ずつまいていきましょう。その後は、鉢植えなら1株、プランターなら3~4株を目安に間引きします。間引きとは、密集した苗から少数の苗を残して、残りの苗を抜く作業のことです。間引きすることで、苗に栄養を十分に行きわたらせることができます。

2-2-2.水耕栽培

水と肥料で育てる水耕栽培でも、ディルを育てることができます。水耕栽培用のスポンジなどに根をつつみ、液肥入りの水につけるだけという簡単な栽培方法です。狭い1人暮らしの部屋や、キッチン・壁に吊るすなど、室内で自由に育てることができます。後ほど、【3.ディルの水耕栽培について】で詳しく説明するのでぜひチェックしてください。

2-3.初心者におすすめの育て方

初心者におすすめの育て方は、水耕栽培です。土を使わないため、室内で簡単に育てることができます。土を使いたくない・室内を汚したくない・手間をかけたくないという方にもおすすめです。

2-4.栽培スケジュール・収穫について

種まき・苗植えは4~6月・9~10月となりますが、秋に種まきをしたほうが開花までの時間が長く、株が大きくなります。そのため、春にまくよりも長期間、葉の収穫ができるでしょう。ディルの開花期は、4月中旬~7月中旬ごろです。草丈が20~30cmほどになったら新芽の先をつんでください。そうすれば、脇から芽が出てくるので株数と収穫量が増します。

2-5.注意点

鉢植え・プランターで育てる場合は、土の表面が乾かないように注意してください。乾きかけていたら、たっぷりと水を与えます。特に、真夏は乾きやすく、葉がしおれてしまうので、こまめに水やりをしなければなりません。

3.ディルの水耕栽培について

それでは、ディルの水耕栽培について詳しく説明します。

3-1.水耕栽培とは

水耕栽培とは、土をまったく使わず、植物の成長に必要な養分を溶かした水溶液で育てる方法です。近年、注目されている栽培方法で、水耕栽培を使用した植物工場が全国各地にできています。葉野菜・ハーブだけでなく、果物・花などさまざまな植物の栽培が可能です。土を使用して育てるよりも、簡単な方法で育てられると注目されています。

3-2.メリット

水耕栽培の大きなメリットは、管理が楽で簡単に育てられることです。液肥入りの水を容器に入れて、根をつけるだけなので小さなスペースであれば室内でも簡単に栽培できます。また、土耕栽培よりも成長スピードが速く、天候の影響も受けません。そのため、収穫量が多く、植物の質が安定します。始めて植物を育てるという方におすすめの栽培方法です。

3-3.そろえる道具

水耕栽培に必要な道具は以下のとおりです。

  • 容器
  • 液肥
  • 植物の苗

以上の道具を用意すれば、水耕栽培を始めることができます。また、根をつつむための水耕栽培用スポンジを準備しておくと便利です。道具を1つずつ準備するのが面倒、と感じている方は、「水耕栽培どっとネット」の水耕栽培キットをおすすめします。水耕栽培に必要な道具がすべてそろっているため、すぐに育てることが可能です。ほかにも、水耕栽培関連の道具を販売しているのでぜひチェックしてください。

3-4.主な栽培方法

ディルの水耕栽培は簡単です。まず、苗から茎の一部を切り、液肥入りの水溶液につけてください。直接根をつけるのもよいですが、水耕栽培用のスポンジ(なければ、普通のやわらかいスポンジ)につつむとよいでしょう。そうすると、根腐れが起こりにくくなります。
後は、毎日水替えをしていきましょう。水耕栽培の栄養源は水なので、新鮮な水を与えていかなければなりません。葉の様子を見て、しおれているのであれば液肥を追加してください。

3-5.肥料・光・害虫などについて

一般的に、ディルが成長してきたら2週間に1回程度、液体肥料を与えます。液体肥料の種類によって、倍希釈が異なるので注意してください。葉の様子を見ながら、液肥の量を調節するとよいでしょう。また、日当たりのよい場所に置くことも大切です。夏場は直射日光が強いため、レースカーテン越しに光が当たるよう工夫してください。
ディルは害虫発生の少ないハーブですが、キアゲハが好んで産卵する傾向があります。室内で育てる場合は問題ないでしょう。しかし、外に置く場合は、防虫ネットを張ったほうが安心です。

3-6.収穫について

水耕栽培は成長スピードが速いため、ディルの茎もすぐに伸びるでしょう。20cm程度に伸びてきたら、芽をつんでください。ディルは花芽ができると葉っぱの香りが薄れ、種をつけると枯れ始めます。そのため、花の茎が伸び始めた時点で、こまめにつみ取るようにしてください。

3-7.注意点

ディルと同じく、魚料理のスパイスとして使用されるフェンネルというハーブがあります。同じセリ科の仲間ですが、近くで育てるとお互いの性質が混じり、香りと質が失われてしまう可能性があるので注意してください。フェンネルも育てる場合は、離して育てることが大切です。

4.ディルの栽培に関してよくある質問

ディルの栽培に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。

Q.ディルの土づくりが知りたい
A.ディルは、土はけ・水もちのよい土を好む傾向があります。鉢植え・プランターで育てる場合は、赤玉土(小粒)7:腐葉土3の割合で混ぜた土を使用してください。または、市販の草花用培養土か、ハーブ用培養土でも構いません。地植えの際は、庭土へ植えつける2週間前に苦土石灰(くどせっかい)と腐葉土を混ぜて水はけをよくしておきましょう。

Q.寄せ植えはできるのか?
A.異なるハーブを同じスペースに栽培する寄せ植えは、相性のよさが重要です。たとえば、ディルの場合、お互いの魅力を打ち消すフェンネルとの寄せ植えは向いていません。水もちのよい土を好むパセリ・バジルなどと一緒に寄せ植えをするとよいでしょう。

Q.水耕栽培で発芽させる方法とは?
A.スポンジの中心に穴をあけて種を入れていきます。スポンジは、液肥が含まれている水溶液につけておきましょう。シンプルな方法ですが、初心者は困難に感じるかもしれません。ある程度、水耕栽培に慣れてから発芽に挑戦してください。最初は、苗から始めたほうがよいでしょう。

Q.水耕栽培で起きやすいトラブルとは?
A.「根腐れ」を起こしやすい傾向があります。根腐れの原因は、日当たりの悪さ・水を替えない・液肥の与えすぎがほとんどです。水から栄養分を吸収するため、できるだけ毎日水替えをして、日当たりと風通しのよい場所に置いてください。

Q.開花後に収穫する際の注意点とは?
A.花が咲き終わった後に収穫するときは、ディルの果実が黄褐色になりかけた房(ふさ)を切り取りましょう。一年草なので、再び開花することはありません。房を切り取った後は、風通しのよいところに吊るしておくと乾燥させることができます。乾燥後、花・葉・果実に分けて湿らさないように保存すると、ハーブティーにしたり、枕に入れて安眠効果を得たりできるでしょう。

まとめ

いかがでしたか? ディルは一年草のハーブで、独特な香りを放ちます。さまざまな料理に使うことができ、ハーブの中でも用途が幅広いと好評です。一般的に、ディルを育てるときは土を使いますが、水と液肥だけで育てる水耕栽培でも育てることができます。水耕栽培は初心者向きという簡単な栽培方法なので、気軽に始めることができるでしょう。ディルの栽培ポイントをつかみ、ぜひ栽培を楽しんでください。


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