挿し芽とはどんな方法?お気に入りの植物を自分で増やしてみよう!

「植物の株を増やしたい」「自分の手で株を増やすにはどうしたらいいのか」など、その悩みよくわかります。株を増やす方法は見よう見まねで試してみても、きちんと基礎知識を持っていなければ失敗してしまうものです。そこで、株を増やす「挿し芽」とは何なのか、挿し芽栽培のメリットや方法など詳しく説明しましょう。

  1. 挿し芽の基礎知識
  2. 挿し芽栽培のメリット
  3. 挿し芽栽培の方法
  4. 挿し芽栽培のコツとポイント
  5. 水耕栽培でする挿し芽栽培
  6. 挿し芽に関してよくある質問

この記事を読めば、挿し芽を正しい方法でするために必要な知識を身につけることができます。挿し芽について知りたい方、挿し芽で植物を育てたい方は必見です。

1.挿し芽の基礎知識

挿し芽の方法について知る前に、挿し芽とは何なのか基礎知識をチェックしておきましょう。これから説明する内容は、挿し芽を成功させるには大切な内容です。

1‐1.挿し芽とは

挿し芽とは親株から枝や茎を切り取って増やす方法のことです。栄養体となる親株の枝・茎を使用するため、「栄養繁殖」ともいいます。ガーデニング初心者にとっては「難しそう…」と思うでしょう。しかし、正しい栽培方法を知っておけば簡単に増やすことができます。

1‐2.挿し芽の原理

なぜ、親株の茎・枝を切り取っただけで新しい株が作れるのでしょうか。挿し芽の秘密は「栄養細胞」が関係しています。栄養細胞とは植物の茎や枝にある細胞のことです。栄養細胞がきちんと働いていれば、新しい植物として育てることができます。親株の枝・茎・葉などは栄養栽培としての役割を担っているため、切り取っても単体として育てられるのです。また、茎・根の部分にはどんな体細胞にでもなれる「万能細胞」が存在しています。万能細胞が多数残存していることで、さまざまな体細胞に分化できるのです。

1‐3.挿し芽で育てられる植物

挿し芽で育てられる代表的な植物はアイビー・ポトス・ベンジャミン・ハイビスカス・ブーゲンビリアといった観葉植物(多肉植物)になります。また、草花ではコスモス・ミント・バジル・菊・リンドウなど、花木ではクチナシ・ツバキ・ミニバラ・ハナミズキ・クチナシ・アジサイなどが差し芽での栽培が可能です。

1‐4.挿し木との違い

挿し芽と似ている言葉の「挿し木」があります。挿し木と挿し芽の違いは「増やす株の種類」です。挿し芽でおこなう栽培は草花が対象になります。一方、挿し木の対象は木です。木の茎・葉・枝を切り取って株を増やす場合は「挿し木」と呼ばれることになります。

2.挿し芽栽培のメリット

親株から新しい株を作る「挿し芽栽培」には一体どんなメリットがあるのでしょうか。挿し芽と通常栽培の違いから挿し芽に向いていない植物まで詳しく説明します。

2‐1.挿し芽と通常栽培の違い

日本でいう通常栽培とは「通常量の農薬を使用した栽培方法」のことです。一方、「挿し芽」は親株から株を増やす栽培方法になります。そのため、通常栽培で育てた植物を親株にすれば、親株と同じ性質の植物が育つでしょう。親株の性質によって挿し芽の性質も変わります。

2‐2.挿し芽のメリット

親株が理想的な状態の場合、挿し芽のメリットが働きます。親株が良い状態で挿し芽をすれば、より理想的な植物が簡単に増やせるのです。株を増やすことだけでなく、自分にとって理想的な植物に育てることができます。新しい株が欲しくても、親株とまったく同じ株が見つかるとは限りません。種を購入してまいてみたら繁殖力が弱かったり、期待していた花色ではなかったりすると落ち込むでしょう。しかし、挿し芽をすれば、親株と同じ性質を持った株が簡単に作れるのです。

2‐3.挿し芽のデメリット・注意点

理想的な株を増やすことができる挿し芽でもデメリットがあります。デメリットは親株が病気になっていると新しい株にも移ってしまうことです。親株の茎・枝を切り取って増やすため、親株自身が病気の因子を持っているとすべてがダメになってしまいます。たとえ、挿し芽で増やせても病気になる確率が高いでしょう。よって、挿し芽をする際は親株に問題がないかどうか確認しなければなりません。

2‐4.挿し芽に向いていない植物

挿し芽は多くの植物でできます。しかし、植物によっては挿し芽が難しいもの、発根しづらいものなどがあるので注意しなければなりません。挿し芽に向いていない、難しい植物はクレマチス・マーガレット・ゼラニウムなど種から繁殖するタイプです。ガーデニング初心者は挿し芽に向いている多肉植物などから始めてみてはいかがでしょうか。

3.挿し芽栽培の方法

それでは、挿し芽栽培の方法について説明していきます。全体的な流れや必要な道具、栽培方法の種類など一緒にチェックしていきましょう。

3‐1.挿し芽栽培の流れ

挿し芽栽培の流れを大まかに説明します。まず、親株から適した茎・枝・葉を選び切り取ってください。できれば、健康的で充実した枝・茎を選びましょう。切り取ったものは底に穴をあけた容器に入れます。1~2節ほど埋まる深さまでまっすぐに入れましょう。そして、入れた後はたっぷりと水を与えてください。親株から切り取る→新しい土に入れる→水やり・管理が大まかな流れです。

3‐2.挿し芽栽培に必要な道具

挿し芽栽培をするには必要な道具を用意しなければなりません。最低限用意しておきたい道具は以下のとおりになります。

  • 挿し芽用の土(園芸土でもOK)
  • 茎や枝を入れる鉢(イチゴパックなど)
  • 園芸用のはさみ
  • 発根促進用剤(あれば便利)

3‐3.栽培方法

主な栽培方法は「地植え」「鉢植え」「水耕栽培」の3つです。それぞれの栽培方法をご紹介しましょう。

3‐3‐1.地植え

草花を地面に直接植えることを「地植え」といいます。鉢ではなく、庭や花壇に植える場合は「地植え」です。挿し芽の場合、地植えをするケースもありますが大きくなってから定植をする流れが一般的な方法になります。芽が出てくるまでイチゴパックなどで栽培してください。そして、芽が出てから花壇・庭に植えていきましょう。

3‐3‐2.鉢植え

ベランダで育てる際はプランターや鉢を使用した「鉢植え」が適しています。植物の葉・茎を切り取って専用のプランター・鉢に入れてください。最初は小さめのプランター・鉢にして、芽が出始めて大きくなったら大きいサイズに植え替えるといいでしょう。

3‐3‐3.水耕栽培

親株から切り取った茎・根を水にひたして育てる方法が「水耕栽培」です。栄養分が入った水で育てる栽培方法なので、狭い部屋でも簡単に挿し芽ができます。近年、注目度が高まりつつある栽培方法です。

4.挿し芽栽培のコツとポイント

知識やコツをつかんでおかなければ、簡単な挿し芽でも失敗してしまいます。挿し芽を成功させるコツや日光・肥料など、ぜひチェックしてください。

4‐1.成功のコツ

親株から適した茎・根を選定することが成功のコツです。適当な部位から選んではいけません。今年伸長した、よく育っている部位から選んでください。できるだけ、病害虫に犯されている部分は避けましょう。そして、選んだ枝・茎は葉を2~3枚残して10cm程度の長さに切り取ります。もし、花や実がついているときは取りのぞいてください。切り取るときは清潔な園芸用のはさみを使用し茎を傷つけないようにします。丁寧に切り取ったかどうかで、今後の生長に大きく影響するでしょう。

4‐1‐1.日光

植物の生長にとって、日光は必要なものです。しかし、挿し芽をした後は、風のとおりがいい半日陰になっている場所に置いてください。午前中だけ日の当たる場所に置いておいたほうが元気よく育ちます。直射日光は水分の飛散を促してしまうので気をつけてください。

4‐1‐2.肥料

肥料を使わなくても育てることはできますが、与えたほうが順調に育てられます。挿し芽をするときは「発根促進剤」を使ってみてください。ルートン・オキシベロンといった発根促進剤がホームセンターや園芸店などで販売されています。発根促進剤の使い方は簡単です。ティッシュペーパーで切り口の水気を拭きとった後、発信促進剤をつけます。そして、容器に入った土となじませてください。

4‐1‐3.挿し芽の土

挿し芽の土は最も大切なポイントといえるでしょう。植物は土から栄養をもらって生長していきます。挿し芽に適した土は「挿し芽(挿し木)専用の土」です。園芸店・ホームセンターなどで購入できます。土を選ぶ際は「保水性・排水性に優れているか」「清潔な状態であるか」の2点に注目するといいですよ。

4‐2.挿し芽のタイミング

挿し芽に適した時期は「梅雨」です。梅雨の時期は湿度・気温が高く、根づきやすい傾向があります。ただし、植物によって適した挿し芽のタイミングがあるので注意してください。基本、親株が1番生長する時期「生育期」の前になります。生長し始める前のタイミングで挿し芽をしましょう。

4‐3.失敗しない方法・注意点

挿し芽をする際、カットできないからと何度もはさみを使用してはいけません。親株から茎・根を1回で切り取ってください。「なかなか切れない…」と何度もはさみを使っていては茎を傷つけてしまいます。

5.水耕栽培でする挿し芽栽培

近年、注目を浴びてきている「水耕栽培」とは一体どんな方法なのでしょうか。挿し芽栽培は水耕栽培でもおこなうことができます。そこで、水耕栽培について詳しくチェックしておきましょう。

5‐1.水耕栽培とは

水耕栽培とは土を使用しない栽培方法のことです。養液・適度な温度・光がそろっていれば室内で簡単に育てることができます。気候に左右されず、台風や雨風などの影響も受けないので安定した供給が可能です。そのため、多くの工場や農業・企業が水耕栽培の導入を始めています。

5‐2.水耕栽培における挿し芽栽培の方法

水耕栽培での挿し芽栽培は非常に簡単です。親株から茎・根を切り取った後、養分が含まれている水に切り口の部分をひたします。数日間ひたしておくと根が生えてくるでしょう。ある程度、根が生長してきたらペットボトルで作った植木鉢に固定します。飲み口の部分を逆さまにしてスポンジなどで固定すれば、簡易の水耕栽培キットの完成です。また、専用の水耕栽培キットも発売されています。ぜひチェックしてみてはいかがでしょうか。

5‐3.水耕栽培おすすめポイント・メリット

水耕栽培は何といっても「土を使わない」点が大きなメリットです。土を使わない=部屋が汚れない、狭いところでも栽培できる、病気・害虫の心配がないなどたくさんのメリットがあります。そして、初心者でも簡単に栽培できる仕組みも人気の理由です。水やりをする必要もなく、簡単な手入れだけで育てることができます。

5‐4.水耕栽培のコツ・注意点

水耕栽培のコツは「肥料の濃度」です。ハイポニカといった液体肥料を使用しますが、肥料の濃度が高すぎると根腐れを起こしてしまいます。植物の状態を見ながら肥料の濃度を調節してみてください。また、水替えをこまめにしていきましょう。水耕栽培は清潔な水・日光・肥料の3つが大切です。

5‐5.水耕栽培に向いている植物

ガーデニング・家庭菜園で人気がある「トマト」も水耕栽培で育てることができます。トマトは水耕栽培に向いている野菜です。ミニトマトなら挿し芽をしながら育てることができるでしょう。ほかにも、ハーブ類やホウレンソウ・ルッコラなどの葉野菜が水耕栽培に向いています。

6.挿し芽に関してよくある質問

挿し芽に関してよくある質問を5つピックアップしてみました。これから、お目当ての植物を増やしたい、挿し芽で増やそうと思っている方はぜひチェックしてください。

6‐1.トマト以外の挿し芽に向いている野菜とは?

圧倒的に簡単な野菜は葉物野菜です。ブロッコリー・キャベツ・ミズナ・セリ・モロヘイヤ・コマツナなど簡単に育てられます。ネギ・ニンニク・ショウガなども挿し芽に適した植物です。

6‐2.挿し芽に適した具体的な気温とは?

多湿かつ15℃~25℃の気温が挿し芽に好ましい時期とされています。地域によっては挿し芽に適した気温が異なるので、適した気温になっているかどうか確かめてください。

6‐3.水耕栽培に必要な道具とは?

水耕栽培に必要な道具はペットボトル(容器)・液体肥料・スポンジ・植物の茎や根です。自分でも簡単に準備できるものばかりですが、初心者向けの専用キットが発売されています。専用キットにはいつでも日光が与えられるように植物栽培用ランプも入っているのでおすすめです。

6‐4.挿し芽の水やり頻度が知りたい

挿し芽をおこなっている最中は水をたっぷりと与えなければなりません。土が乾かないように気をつけてください。常に湿っている状態が好ましいです。

6‐5.大きい鉢に植え替えるタイミングとは?

親株から切り取った後、1~2週間ほどで発根します。本葉が3~4枚ほど育ってきたら一回り大きい鉢やプランターに植え替えてあげてください。

まとめ

いかがでしたか?挿し芽の基礎知識・栽培方法などをきちんと把握しておけば簡単に育てることができます。自分のペースでお気に入りの植物を増やしていけるでしょう。もし、土いじりが苦手な方、育てるのが難しいと感じている方は「水耕栽培」にチャレンジしてみてください。水耕栽培は土耕栽培よりも簡単に育てることができます。


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