塩害による農作物の被害にはどんなものがある? 対策方法や予防方法は?

農地の塩害とは、台風や地盤沈下・津波などによって農地に海水が浸食し、農作物が育たなくなる被害のことです。小規模な塩害は、湾岸沿いの農地を中心として定期的に発生し続けていました。2011年に発生した東日本大震災による津波の被害で東北地方の農地に大規模な塩害が発生し、未だに復旧作業が続いています。

そこで、今回は農地の塩害対策についてご紹介しましょう。

  1. 塩害とは?
  2. 塩害対策の方法
  3. 塩害対策としての水耕栽培
  4. 塩害やその対策に関するよくある質問

この記事を読めば、塩害が発生した場合の対策方法も分かります。塩害対策について詳しく知りたいという方は、ぜひ読んでみてくださいね。

1.塩害とは?

塩害とは、主に海水が原因で地中の塩分濃度が上昇することによって発生するものです。通常、海水が農地に入ることはありません。しかし、台風・高波・津波による農地への冠水が起こった場合、水が引いた後で塩害が発生することがあります。

また、プランターや植木鉢など少量の土で植物を育てている場合、塩分を含んだ風でも塩害が起こることもあるでしょう。

1-1.塩害の被害について

土中に塩分が増えると、土中溶液(水や液体肥料など)の浸透圧が増加して農作物の根の給水機能が低下したり、植物の根や茎に蓄えられている水分が土中に流失してしまいます。

また、土壌が荒く硬くなり、排水機能が低下して根腐れを起こしやすくもなるでしょう。塩害が発生すると育成中の農作物が枯死したり、根腐れを起こしたりします。

1-2.日本で発生している塩害について

塩害は世界中で発生している農地の問題です。日本では、前述したように2011年に発生した東日本大震災の津波被害により、2万haもの農地が塩害の被害に遭いました。その復旧作業は、現在も続いています。

また、地盤沈下が起こると海を埋め立てた土地の場合は地下水に海水が混じり、庭木などに塩害の被害が起こることもあるでしょう。

2.塩害対策の方法

この項では、塩害の予防方法や対策方法をご紹介します。どのような対策をすれば、塩害を防げたり解消したりできるのでしょうか?

2-1.塩害を予防する方法

塩害は、農地だけでに被害が出るものではありません。塩分は金属を腐食させたりコンクリートを劣化させたりもします。そのため、海岸から200m~500m以内を重塩害地域、海岸から2km以内を塩害地域に指定して、建物や金属製品に防腐処置や防サビ処置を行うのが一般的です。また、屋内に入れられるものは可能な限り屋内に保管しておくと、塩害の被害を予防することができます。

農地の場合は、高潮や台風・津波の被害を防ぐために堤防を作って冠水を防いでいる地域が多いでしょう。また、塩害に弱い作物はビニールハウスの中で栽培する方法が取られているところもあります。

2-2.農地で塩害が発生した場合の対処方法

高潮や台風・津波などで農地に海水が浸食した場合、石灰を原料とする土壌改良資材を投入したうえで、農地に真水を入れて塩分を洗い流します。塩分濃度が高い場合は、農地の表面を入れ替えることもあるでしょう。塩分を洗い流し終わったら、排水設備を整備して真水を排水して終了です。

排水設備を作る余裕がなかったり一刻も早く農業を再開したかったりする場合は、耐塩性の植物を栽培する研究も進められています。現在、東北大学大学院が耐塩性のアブラナ科植物の栽培体系を確立し、収穫した植物からなたね油を取ってバイオディーゼル燃料を作り出す方法を試験的に行っている最中です。

3.塩害対策としての水耕栽培

この項では、塩害対策としての水耕栽培について解説します。土壌改良に比べるとどのようなメリットがあるのでしょうか?

3-1.水耕栽培とは?

水耕栽培とは、肥料を溶かした水溶液で植物を栽培する方法です。土壌を使わないので、室内でも大規模な野菜栽培を行うことができます。
また、水耕栽培を室内で行うことで、天候や病害虫に悩まされることなく農業をすることも可能です。無農薬栽培を土壌栽培で行うには大変ですが、水耕栽培ならば少人数で行うことができるでしょう。

3-2.塩害対策としての水耕栽培

前述したように、塩害を受けた農地を元通りにするまでには時間も費用もかかります。塩害を受けた土地に水耕栽培を行う建物を建てれば、建物が完成し次第農業を再開することができるでしょう。費用も、農地を元通りにする費用よりも安くすむこともあります。

また、水耕栽培は土壌栽培よりも場所を使わずに、大規模に農作物を栽培することが可能です。ですから、今まで使っていた農地を離れて都市部に近い場所で農業を続けることもできます。

3-3.水耕栽培のメリット・デメリット

水耕栽培は、前述したように天候に関係なく1年を通して安定した収穫が行えます。また、建物内で栽培しますので、露地栽培のように汚れがつくこともありません。収穫した後は洗わずに食べることができるため、外食産業は重宝するでしょう。実際、復興事業として多くの外食産業が東北で水耕栽培に参入してきています。

その一方で、水耕栽培は水道代や電気代がかかるため、露地栽培の野菜に比べると高価になりがちです。さらに、現在の技術では栽培可能で採算が取れる野菜は、レタスなどのごく一部に限られています。

3-4.水耕栽培を導入する方法

水耕栽培を大規模に行いたい場合は、水耕栽培どっとネットのような専門業者を利用するのがおすすめです。新たな建物を建てなくても、倉庫などを利用して水耕栽培を始めることもできます。

個人で水耕栽培を行いたい場合も、必要な道具がすべてセットになったキットが販売されていますので便利です。「家庭菜園を始めたいけれど、土の始末などが面倒」という方は利用してみましょう。食育や夏休みの自由研究にも利用できます。水やりをする必要もないので、留守がちなお宅でも問題ありません。

4.塩害やその対策に関するよくある質問

Q.海から離れた場所でも塩害が起こることはありますか?
A.埋立地の場合は、地下水に海水が混じって塩害が発生することもあるでしょう。

Q.塩害が発生した場合、自治体から補助金などがでることはありますか?
A.津波など大規模災害が発生した場合は、自治体が主体となって復旧を行うこともあるでしょう。

Q.水耕栽培を始めたいのですが、大規模に行う場合は費用はどれくらいかかるものですか?
A.一から建物を作った場合は、億単位の費用がかかります。ビニールハウスを作るようにはいかないので、業者とよく相談しましょう。

Q.家庭用の栽培キットは、どのようなものが栽培できますか?
A.リーフレタスやハーブなどが栽培可能です。

Q.水耕栽培に必要なものを自分で作ることはできますか?
A.はい。自作している方もいます。

おわりに

いかがでしたか? 今回は、塩害とその対策についてご紹介しました。塩害は一度発生すると復旧するまでに時間と費用がかかるので、予防が大切です。現在、東北の主な自治体では水耕栽培を行う農家には補助金などを出し、普及に力を入れています。

今のところ、水耕栽培されている作物はレタスなど一部の葉物野菜に限られていますが、技術が進歩すればもっと多くの野菜が栽培できるようになるでしょう。そうなれば、塩害が発生する可能性のある農地は、徐々に水耕栽培を行う屋内型農業に切り替わっていくかもしれません。


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